Bill Evans『Waltz For Debby』レビュー

Bill Evansのピアノは好きで『You Must Believe in Spring』のアルバムから聴き始めました。他には『I Will Say Goodbye』『Half Moon Bay』と聴いて行きましたが、有名すぎるため『Waltz For Debby』は避けていたかもしれません。

『Waltz For Debby』は最初の頃に聴きましたが、あまり感動がなかったと記憶しています。しかし、ディスコグラフィを調べてみると、Bill Evansは大きく1960年代と1970年代とに分けてリリース・アルバムを検証する必要があると考えました。音楽の傾向に顕著な変化があるからです。もちろんBill Evans TRIOでのリリースとBill Evans単独でのリリースの違いも影響しているのかもしれません。

1960年代は試験的なまだ模索しているようなピアノのフレーズがありました。悲しさが感じられるようなトーンやフレーズはなかったと思います。しかし1970年代に入ってくると音が細く突き刺さるようなそしてどことなく重い感じのトーンへと変化しています。アルバム全体で空虚感を感じるものもあります。

私が聴いていたのは1970年代リリースのものに偏ってもいました。1961年録音のこのアルバムはエバンスの代名詞的なアルバムでもあり私も今では一番好きなアルバムになりました。

私が購入した3種類のアルバム、SHM-CD、UHQCD、XRCDの比較感想を伝えたいと思います。

Waltz For Debbyとは

ジャケットの印象

女性の影のようなものが二重に投影されています。背景の薄いブルーが黒の縁と相まって綺麗です。

音の特徴

通常版と完全版とでは音質よりも聴こえてくるニュアンスに違いがあります。どちらもライブ録音ですが、通常版はスタジオ録音のように不要と感じられた部分はカットされています。完全版は文字通りカットなしになります。

スタジオ録音のように聴くかライブとして聴くかの違いです。

ベースのスコット・ラファロ参加の最後のアルバムで、まるでピアノと共演しているかのようなベースです。ビートルズでいう『サムシング』のジョージのギターとポールのベースの関係に近いかもしれません。そこにポール・モチアンのドラムが絡んできて見事なトリオになっています。自己主張の強い演奏でもなければ、エバンスのためだけの演奏でもないところがこのアルバムの凄いところでしょう。

ジャズ・ベーシストにCharles Mingusがいますが、スコット・ラファロのベースの方が繊細さと大胆さと丁寧さがあって好きです。ビル・エバンスのアルバム購入に関し、私は終わりの方でこのアルバムを購入しましたが、入門アルバムに最適です。

雰囲気・世界観

完全版以外のCDで言うと、オープニングの『My Foolish Heart』に全てが込められていると思います。タイトル名もいいし。物悲しいままで終わるのではなく、そこには優美さも持ち合わせております。

おすすめの聴き方・シーン

一人で聴いても良し夫婦や恋人同士でも聴けば距離が近くなる音楽です。どこか静かな海の近くで車を止めて聴いてください。

総評

オープニングの『My Foolish Heart』で心を鷲掴みにした後、2曲目の『Waltz For Debby』のベースとピアノのユニゾンとまるで踊っているかのような弾ける演奏で世界との隔離をしていきます。

『Detour Ahead』では静かに詩を朗読しているようなピアノの旋律。3曲目以降も同様です。ラストの『Milestones』でもしかしたら賑やかにプレイしまくって終わりなら嫌だなあと思っていると、予想をしっかり裏切ってくれます。ドラムとベースが賑やかな演奏なのにエバンスのピアノは全く別の世界にいるかのような演奏です。

ピアニッシモに徹したサウンドで、ドラムの方に耳が向かうくらいです。ピアノがドラムやベースの音数の半分以下の音数なので不思議なバランスで聴くことができます。レフトにドラム、ベース、歓声、ライトにピアノの振り分けが功を奏しています。レフトの雑踏とライトの静寂感がより一層このアルバムを不動のものにしています。

レコーディング・エンジニアの果たす役割の大きさを実感したアルバムでもあります。

キャッチコピー

『最初に聴くべき名盤』

AllMusic評価

5
Masterpiece
AllMusicスコア評  価
Masterpiece
Excellent
Strong
Good
Average
Mixed
Poor
Very Poor
Awful

Waltz For Debby(完全版SHM-CD)

ライブ盤として実感できる内容で、「Gloria’s Step」演奏中に起こった途中の停電で途切れる場面や臨場感は他のバージョンでは味わえないです。完全版なだけあって曲数が一番多く3枚組でこのアルバムだけに収録されている『オール・オブ・ユー』は聴きごたえがあります。

音質的には拘りがなければいい音に聴こえるでしょう。しかしイマイチ、エッジに欠けていて透明感も不足しています。貴重な音源でもありますので是非全て聴いてみましょう。

Waltz For Debby(UHQCD)

3枚の中で最も躍動感のない物静かな音に仕上がっています。曲数も6曲のみとなっています。UHQCDでリリースする場合は最新のリマスターを行っています。透明感はSHM-CDより向上していますが、ピアノ、ベース、ドラムとエッジのない音になっています。

グッと迫ってくる音を求めている人には物足りなさを感じてしまうでしょう。

ワルツ・フォー・デビィ+4 [XRCD]

音質的にはこのXRCD盤が最強。透明感と各楽器のエッジ、一歩前で演奏しているかのようなリアリティはこのアルバムでしか聴けません。音は太く迫力があります。

XRCDはオリジナルのアナログマスターテープの音源を使用しています。その他高音質化のためのプロセス管理をしっかり行っているため透明感の向上につながっていると考えられます。中古でしか手に入りませんが興味のある方は是非聴いてみてください。音質の良さに驚くことでしょう。

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