彼らのルーツを知るうえで正式リリースされたオリジナル・アルバムの中から、彼らがカバーした曲を探求するのが最も分かりやすい方法だと思い調べてみました。初期の頃はカバー曲も混在していますが中期からは完全にオリジナル曲だけになります。
ルーツという観点からはR&Bということになりますが、当時の流行りでしたのでそれだけだとつまらないので私なりのコメントは次の通りです。
- 英国人なのに米国モータウンの音楽を取り入れていたこと。特に女性グループ
- ジョージ&リンゴは明るい曲が好きなこと
- ミドルテンポの重いノリの方がジョンは好きだったこと
またビートルズがアルバムをリリースする上で制約があったとすれば次の点が挙げられます。
- EMIとの契約で年に2枚のアルバムをリリースすること。初期は持ち曲も少なかったからカバーに頼らざるをえなかったのかも
- 当時はレコードだったので、片面の収録時間は20分程度で最大でも25分、両面で40分から50分というのが物理的限界であること
- ジョンとポールが幅を利かせていたため、ジョージの曲は2曲までというルールがあったこと
- 1960年代初頭2枚組LPは普及していなかったこと、2枚組は『ホワイト・アルバム』が始まりだったと記憶しています
Please Please Me

このアルバムが神話の始まりでした。1963年リリースの録音は1日の一発録音で完了した。レッド・ツェッペリンのような多額の契約料ももらえてなかったと思います。それは意外にも売れると思っていた関係者はジョージ・マーティンだけだったということでしょう。
予算をあまり与えられなかったことから一発録音となったわけで、メンバー全員が相当緊張していたと思います。そのせいで『Please Please Me』の歌詞をジョンが間違えてしまったというエピソード付きのアルバムです。
Anna
- 作詞・作曲 アーサー・アレキサンダー
- ボーカル ジョン・レノン

ジョンがカバーしたので、オリジナルとかなり違ったアレンジになっていると思ったらそうでもなかったです。忠実にコピーしたと言っていいでしょう。
ドラムのタメといい、リンゴ・スターも完璧なコピー。アレンジしている余裕がなかったのだと思います。
Chains
- 作詞・作曲 ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング
- ボーカル ジョージ・ハリスン

作詞・作曲キャロル・キングとなっていますが、『つづれおり』のキャロル・キングです。後年キャロル・キングも歌っておりYouTubeで見ることができます。
1962年クッキーズという女性グループによってシングル発売されました。こちらもオリジナルに忠実なコピー。
Boys
- 作詞・作曲 ルーサー・ディクソン&ウェズ・ファレル
- ボーカル リンゴ・スター

1960年にシュレルズという女性グループによってシングル発売され、『トゥナイト・ザ・ナイト』というファースト・アルバムにも収録されました。
オリジナルに忠実なコピーですが、リンゴの鼻にかかったボーカルが好きではないのでポールの方が良かったです。
Baby It’s You
- 作詞・作曲 ルーサー・ディクソン&マック・デヴィッド、バート・バカラック
- ボーカル ジョン・レノン

ジョンもリンゴもシュレルズが余程好きなのでしょう。オリジナルの方は上品な歌い方なのでこれもありでしょう。しかしジョンの暗い歌い方の方が私としてはしっくりきます。
A Taste Of Honey
- 作詞・作曲 ボビー・スコット&リック・マーロウ
- ボーカル ポール・マッカートニー

元々はインストゥルメンタルの曲でしたが、後年歌詞を付けたカバーが発売されました。レニー・ウェルチのバージョンをポールはカバーしています。
まだボーカルとして確立していなかった頃のポールですが、声域が狭い感じでこの曲には意外に合っています。
Twist And Shout
- 作詞・作曲 フィル・メドレー&バート・ラッセル
- ボーカル ジョン・レノン

アイズレー・ブラザーズがカバーして大ヒットしました。こちらはテンポがジョンよりも遅く丁寧に歌われているため迫力がないです。
最初はビートルズのオリジナル曲だと思っていたくらいジョンにピッタリの曲だったからです。コーラスをフューチャーしたビートルズ・バージョンは、秀逸な仕上がりだったと言わざるを得ません。
イントロからコーラスで始まって歌い始めるバージョンもビートルズにはありました。記憶だとどこかのライブのときに歌っていました。
With the Beatles

セカンド・アルバムでこれまであまり聴かなかったが、改めて聴いてみると『Please Please Me』よりレコーディング期間が長い(3カ月)せいかゆとりを感じさせる内容です。
歌が上手くなっているというのが第一印象。『All I’ve Got To Do』のベースラインの方が『All My Loving』のランニング・ベースよりヘビーでいい。ヘフナーのバイオリンベースだから出る引き締まった重低音。
Till There Was You
- 作詞・作曲 メレディス・ウィルソン
- ボーカル ポール・マッカートニー
色々調べましたが、ビートルズ前のカバーも含めて見つけることができませんでした。どんな名曲も聴かれなくなると消滅していくので、ビートルズのようなビッグ・バンドがカバーしたことで後世に残せるということは凄いです。
ビートルズはいい仕事をしています。
Please Mister Postman
- 作詞・作曲 ウィリアム・ギャレット
- ボーカル ジョン・レノン

数多くのアーティストがカバーしていて、カーペンターズもカバーしているのでそちらの方が有名かもしれません。本家はThe Marvelettesという女性グループです。
レーベルはモータウン(現在はユニバーサル・ミュージック傘下)で英語でMOTOWNです。アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト発祥のレコードレーベルでMOTOR TOWNの略だと思います。日本のトヨタ本社周辺からレコードレーベルは生まれていないことから、米国は本当に多様性の国だと感心してしまいます。
恐らく当時モータウン・ミュージックをいち早く英国に紹介したのもビートルズでしょう。色々な音楽を聴き漁っていたことが分かります。勉強熱心というよりは感受性の高い人の集まりがビートルズだったことの証左。
ビートルズは、ハンドクラップをイントロに入れたりコーラスが上手いので曲に盛り上がりができて本家よりも出来がいいです。
Roll Over Beethoven
- 作詞・作曲 チャック・ベリー
- ボーカル ジョージ・ハリスン

ジョージのギター、ボーカルともにチャック・ベリーに比べるとパワー不足ですが、上品なロックもいいでしょう。ジョージも多様な音楽を聴くだけでなく実践しているのが凄い。
You Really Got A Hold On Me
- 作詞・作曲 スモーキー・ロビンソン
- ボーカル ジョン・レノン&ジョージ・ハリスン

スモーキー・ロビンソン & ザ・ミラクルズでバンド演奏していますが、パロディっぽく歌っているのがダメですね。ビートルズの方がシビアかつコーラスが絶妙で断然いい。
こちらもモータウンレーベルの曲なので、ジョンもジョージもミドルテンポの重いノリの曲が好きなのかもしれません。
Devil in Her Heart
- 作詞・作曲 リチャード・ドラプキン
- ボーカル ジョージ・ハリスン
ザ・ドネイズというバンドが『デヴィル・イン・ヒズ・ハート』としてレコーディング。ジョージが男性から女性のHerに変更している。このあたりはジョージのセンスの良さを感じます。
残念ながらオリジナルのアルバムは無し
Money
- 作詞・作曲 ジェイニー・ブラッドフォード&ベリー・ゴーディ
- ボーカル ジョン・レノン

こちらもモータウン・レーベルの曲になります。黒人の方の曲ですが、ジョンの方が激しく高揚感があっていいです。
Beatles for Sale

『A Hard Day’s Night』でバンドとして一つの完成形だったのかもしれません。この頃にはジョンがポールにバンド活動は止めたいと漏らしていたという話があります。その時にポールがジョンにこう言ったそうです。『オーバー・ザ・トップ』と。既にトップに君臨したのに、あと何枚トップチャートに送り込めば満足したのか。
しかし、ここで終わっていたらビートルズは伝説にもなってなければ、神話化もされていなかったでしょう。
Rock And Roll Music
- 作詞・作曲 チャック・ベリー
- ボーカル ジョン・レノン

オリジナルにもピアノが入っていました。しかし、チャック・ベリーの間の抜けた歌い方がどうしても好きになれません。ジョンの方が激しくロックしています。
Mr. Moonlight
- 作詞・作曲 ロイ・リー・ジョンソン
- ボーカル ジョン・レノン
ロイ・リー・ジョンソン自身が歌っていますが、アルバムは見つかりませんでした。YouTubeで聴くことができます。オリジナルもテンポはジョンと同じですが、シャウト気味で激しく切ない歌い方はジョンならではです。
Kansas City/Hey, Hey, Hey, Hey
- 作詞・作曲 ジェリー・リーバー&マイク・ストーラー
- ボーカル ポール・マッカートニー
オリジナルでは見つかりませんでした。代わりにリトル・リチャードのカバーの方が有名です。ポールもリトル・リチャードを敬愛しているので、こちらのバージョンを参考にカバーしたと思います。
Words of Love
- 作詞・作曲 バディ・ホリー
- ボーカル レノン&マッカートニー

オリジナルに忠実にカバーしています。ビートルズのボーカルが厚いので、ジョンとジョージまたはジョンとポールのダブルトラック録音だろうと。どの組み合わせで歌っているのか判別するのに何度か聴き直しました。結論はジョンとポールでした。ポールの方が声が厚いので。
そして今回改めてビートルズを聴き直して初期はモノラルの方が聴きやすいです。
Honey Don’t
- 作詞・作曲 カール・パーキンス
- ボーカル リンゴ・スター

カール・パーキンスのアルバムで見つけることはできませんでしたが、こちらのアルバムに『Honey Don’t』『Everybody’s Trying To Be My Baby』が収録されていました。
特別なアレンジで歌っているわけでもないので、そんな曲もあるのだと実感した次第。
Everybody’s Trying To Be My Baby
- 作詞・作曲 カール・パーキンス
- ボーカル ジョージ・ハリスン

カール・パーキンスを探している中で発見しました。ビートルズのカバーした曲も収録されていますのでお得です。クラプトン、リンゴ、パーキンス、ジョージと楽しく演奏しております。
貴重な音源なので音質はどうかと思いますが購入する価値はあります。
Help!

アルバム『A Hard Day’s Night』になると完全オリジナル曲だけなのに、次のアルバムの『Beatles for Sale』でカバー曲が復活しています。才能が一旦枯渇したのかもしれません。そしてこの『Help!』でカバーは終了します。
Act Naturally
- 作詞・作曲 ジョニー・ラッセル&ヴォニ・モリソン
- ボーカル リンゴ・スター
バック・オーウェンスによってレコーディングされましたが、現在アルバムを入手することは困難です。しかしYouTubeで聴くことはできます。リンゴのカバーもオリジナルに忠実だと言わざるを得ません。オリジナルもカントリーでした。
Dizzy Miss Lizzy
- 作詞・作曲 ラリー・ウィリアムズ
- ボーカル ジョン・レノン
YouTubeでオリジナルを聴くことができます。ホーンが入っているのがどうしても滑稽に感じてしまいます。むしろリトル・リチャードのカバーの方が激しくて、ジョンはこちらのバージョンをカバーしたと言っていいでしょう。互角に張り合える出来栄えです。
アルバムはありませんでした。





