Bill Evans3部作レビュー

Bill Evansとの出会いは、『You Must Believe in Spring』でSHM-CDの方が音質がいいという口コミを見てプレミア価格で購入しました。この時の曲調がエバンスなんだなあと思いずっと引きずることになりますが。

3部作としましたが、実際には3部作ではなく勝手に私がそう思っているだけです。レコーディング順に並べても妙に辻褄が合ってしまうのが驚き。1980年に亡くなる晩年の作品ですが、死を意識した作品ではなかったかといつも思ってしまいます。

薬物にしても頭では止めた方がいいと分かっていても、止められなかったのでしょう。これだけの繊細なピアノはエバンスにしか弾けないから。

  1. I Will Say Goodbye さよならを言うよ
  2. You Must Believe in Spring 春を信じて
  3. We Will Meet Again また会おう 

I Will Say Goodbye

1977年録音のアルバム。Fantasy Records最後のリリースアルバムとなる。日本での評価は低いが海外では高いという変わったアルバム。グラミー賞も受賞しているし何と比較してこのアルバムの評価が低くなるのか。

収録曲
  1. I Will Say Goodbye
  2. Dolphin Dance
  3. Seascape
  4. Peau Douce
  5. I Will Say Goodbye(Take 2)
  6. The Opener
  7. Quiet Light
  8. A House Is Not A Home
  9. Nobody Else But Me
  10. Orson’s Theme

3曲目までは私の好きなしっとりとした透明感のあるエバンスの曲っていう感じ。しかし4曲目でゴメスのハイポジションのベースがイマイチ馴染めない。

5曲目のI Will Say Goodbye(Take 2)は少しピアノがくどいかもしれません。オープニングの方が私は好きです。6曲目のThe Openerは何故か明るくとても弾んでいる演奏なのでびっくりしますが、このあとの7曲目からは、I Will Say Goodbye調の曲になり聴かせてくれます。

ゴメスのベースの中では、8曲目の『A House Is Not A Home』のベースがピカ一。ローとハイを上手く使って演奏しています。アルバム全般にわたりエバンスのピアノは透明で繊細で言うことなし。ラストは6曲目の『The Opener』調の曲で閉めていますが悪くない終わり方です。

You Must Believe in Spring

1977年録音のWarner Records移籍後初のアルバム。オープニングの『B Minor Waltz』のピアノにやられてしまいました。氷のように透き通った、でも冷たい感じのピアノ。

収録曲
  1. B Minor Waltz(For Ellaine )
  2. You Must Believe In Spring
  3. Gary’s Theme
  4. We Will Meet Again(For Harry)
  5. The Peacocks
  6. Sometime Ago
  7. Theme From M*A*S*H (Suicide Is Painless)
  8. Without A Song
  9. Freddie Freeloader
  10. All Of You

1曲目は自殺した元恋人に捧げた曲。4曲目はお兄さんに捧げた曲、しかし録音の時点では自殺していません。1979年に自殺なので。しかも今後録音されるであろう『We Will Meet Again』という曲で。どういう心境だったのだろう。

9曲目、10曲目とアップテンポな曲で締めくくっているのがこの人の心の構造が複雑なところで理解しがたい。ピアノの録音はエバンスのニュアンスを惜しみなく捉えていると思います。そんな中でこのアルバムで特筆すべき曲は、5曲目の『The Peacocks』だろうと思います。

迷路の中から抜け出せなくなっているような気分にさせてくれます。そしてゴメスのベースがピアノに上手く絡んできていて、ミドルポジションの音の使いが曲調にハマっているのがいい。素晴らしい曲でこのアルバムは満ち溢れていますが、この曲だけは技術的にも曲調的にも異次元の名曲です。

We Will Meet Again

1979年最後のスタジオ録音のアルバム。ゴメスは1978年にエバンスの元を去っています。ジャケットは小さな窓から大きな海が見える光景ですが、なぜ小さな窓からだったのか。

最後の録音をなぜクインテッドにしたのかは分かりませんが、死が近づいていると思ったのかもしれません。クインテッドとは5人編成ということです。少し派手な感じがしますが、華やかさがちょっぴり欲しかったのかもしれません。

ラストのお兄さんに捧げた『We Will Meet Again』はピアノソロで締めくくっています。アルバム『You Must Believe in Spring』に収録されているものよりも短く、タッチが荒いのが妙に印象に残ります。


この記事を書いた人

ogoe 男性

福島県南相馬市原町区から上京してきて30年以上経ちます。仕事は、財務経理が20年以上、不動産関係が10年以上経験があります。趣味は音楽と写真。過去の曲でなかなか聴く機会のないアルバムを若い世代に紹介していきたいと思ってます。

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