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- 2025年4月2日
- 2026年1月31日
高音質オーバーヘッドフォン|AUDEZE LCD-X 2021 OPEN-BACK HPレビュー
SHURE SRH1540からAUDEZE LCD-X 20……

— Rediscovering timeless music, one album at a time —
── 透明感・艶・奥行きを両立する“現代的マスタリング環境”の作り方**
既に『Tokyo Dawn Records(TDR)のTDR VOS SlickEQ』に関する設定の記事で欲しい音に近づけたと思っていた。このプラグインだけでも5,000円台だった。そして新しくプラグイン『TDR Kotelnikov GE』を8,000円以上払ってまで入れる意味があるのかと考えた。『TDR Kotelnikov GE』はフラット系コンプレッサーなので音の伸びが抑制されるのは嫌だと思ったからだ。別の効果としては、音の粒子が細かくなりより一層シルキーなサウンドになり中音域の弦楽器やボーカルに艶が出てくる。
しかし運よくダイレクトメールで、Plugin Boutiqueから14周年記念セールの案内が来てなんと『TDR Kotelnikov GE』が80%OFFで2,000円未満で購入できる案内だった。
大幅値引きは年末に多いようだが本当に運が良かった。そして迷わず購入して、Copilotに相談して最初の設定を土台にチューニングを開始。下記に示すのが私が求めた音質だ。変化が無かったらどうしようと思ったがそんな心配は無用だった。
音の世界は、ほんの少しの設定で劇的に変わる。 今回紹介するのは、SlickEQ GE と Kotelnikov GE を組み合わせ、JRiverでDSD64へアップサンプリングして再生するという、現代のオーディオ環境に最適化された“音質向上メソッド”。
特に、
ZARD、ビートルズ、Led Zeppelin、阿川泰子、カラヤン、Diana Krall── こうした“情報量の多い音楽”を聴く人ほど、違いがはっきり分かる。
まず最初に音の基礎を作るのが TDR VOS SlickEQ GE。
私が使っている設定は以下の通り。
| セクション | 設定 | 評価 |
|---|---|---|
| LOW | 85Hz / +0.5dB / Shelf | ◎:芯がありつつタイト。AMERICANの低域が自然に浮き立つ |
| MID | 2.5kHz / +0.2dB / Bell | ◎:素材のニュートラルさを保ち、ストリングスの艶が活きる |
| HIGH | 10kHz / +0.7dB / Shelf | ◎:Silkyの倍音が滑らかに乗り、空気感と抜けが自然に広がる |
| EQ SAT | American | ◎:トランジェントが速く、低域のエネルギー感が出る |
| OUT STAGE | Silky | ◎:倍音が上品で、ZARDのボーカルに瑞々しさを与える |
| CALIBRATE | 6.0dB | ◎:密度と厚みが最大限に引き出される設定 |
| HP FILTER | 15Hz | ◎:不要な超低域をカットし、音場の濁りを防ぐ |
| LP FILTER | 22kHz | ◎:高域の開放感を保ち、Silkyの質感を活かす |
| TILT FILTER | 650Hz / ±0.0dB | ◎:使わないことで帯域バランスが自然に保たれる |
| OUTPUT GAIN | -0.5dB | ◎:EQの効きを自然に聴かせる絶妙なレベル調整 |
| LOW / HIGH カーブ | Shelf | ◎:広域的に自然な補強が可能。音場の広がりに貢献 |
| MID カーブ | Bell | ◎:ピンポイントで素材のニュートラルさを保つ |

この設定は、 “透明感を保ちながら、ほんの少しだけ艶を乗せる” という方向性。
Americanステージの自然な倍音と、Silkyの滑らかな質感が、中域の情報量を豊かにしつつ、ボーカルの存在感を自然に前へ押し出してくれる。
SlickEQで音の骨格を整えたら、次は TDR Kotelnikov GE。
| 項目 | 設定値 | 具体的な効果 | 音への影響 |
|---|---|---|---|
| Threshold | -0.8 dB | ごく浅くコンプレッションをかけることで、音の質感を壊さず密度だけを整える | 音の粒が細かくなり、情報量が増す |
| Ratio | 1.4:1 | 軽めの圧縮率で、自然なダイナミクスを保ちつつ音圧を微増 | 音が前に出るが、押しつけがましくならない |
| Peak Crest | 3.0 dB | アタック成分を保ちつつ、RMS(平均エネルギー)だけ整える | ボーカルやスネアの立ち上がりが自然に残る |
| Soft Knee | 1.0 dB | コンプレッションの入り方を滑らかにする | 音の変化が自然で、コンプ感が出ない |
| Attack | 14 ms | アタックを潰さずに通す設定。特にドラムやピアノに有効 | 音の立ち上がりが自然で、空気感が残る |
| Release Peak | 160 ms | ピーク成分の戻りをゆるやかにする | 音が呼吸するように自然に戻る |
| Release RMS | 380 ms | RMS成分の戻りをさらに滑らかに | 阿川泰子やDiana Krallのような余韻が綺麗に残る |
| Low Freq Relax | 150 Hz / 3.0 dB | 低域のコンプレッションを緩めることで、締まりつつ太さを保つ | EF400の低域を活かしつつ、濁りを防ぐ |
| Mode | Advanced | ステレオリンクや内部動作が高度化される | 左右の揺れが減り、音像の軸が安定する |
| YANG | ON | 透明・クリーンな動作モード | 音の質感を変えず、整えるだけの動作になる |
| INERTIA | ON | 低域の安定性を高める内部処理 | キックやベースが暴れず、空間の奥行きが出る |

この設定の特徴は、 “音を変えずに、密度と粒立ちだけを整える” こと。
実際に得られた変化はこうだ。
これは、Kotelnikov GE が アタックを残しつつ、RMSだけを整える という動作をしているからこそ得られる効果。
| 項目 | 下限設定 | 効果 | 上限設定 | 効果 |
|---|---|---|---|---|
| Threshold | -0.5 dB | ほぼ原音のまま。透明感を完全に保持しつつ、粒立ちだけ微増 | -1.5 dB | 密度が増し、音が前に出る。やりすぎると“圧縮感”が出始める |
| Ratio | 1.25:1 | 超ナチュラル。コンプがかかっているのが分からないレベル | 1.6:1 | 音圧が上がり、まとまりが強くなる。ロック向き |
| Peak Crest | 2.5 dB | アタックがより強く残る。ドラムやピアノの立ち上がりが鮮明 | 4.0 dB | アタック保持が最大化。音が“立つ”が、まとまりは弱くなる |
| Soft Knee | 1.0 dB | 反応がやや硬め。透明感が最も保たれる | 3.0 dB | 反応が滑らかになり、艶が増す。ジャズやボーカル向き |
| Attack | 10 ms | アタックがしっかり残る。音の立ち上がりが鋭い | 16 ms | アタックがより自然に馴染む。柔らかい印象になる |
| Release Peak | 120 ms | 反応が速く、タイトな印象。ロックや打楽器向き | 180 ms | 余韻が伸び、空間が広がる。クラシックやジャズ向き |
| Release RMS | 300 ms | 音の戻りが速く、タイトで現代的 | 400 ms | 滑らかで“呼吸する”ような戻り。奥行きが増す |
| Low Freq Relax | 120 Hz | 低域がよりタイト。キックが前に出る | 180 Hz | 低域の余裕が増し、深みが出る。ベースが太くなる |
SlickEQとKotelnikovで整えた音を、 JRiverでDSD64へアップサンプリングし、DSDネイティブ再生する。
これが今回の音質向上の“決定打”になっている。
DSDは、
という特性があるため、 コンプやEQの“ほんの少しの調整”がそのまま美しい質感として現れる。
特に中域の艶は、 SlickEQのSilky × DSDの滑らかさ という相乗効果で生まれている。
PCM音源をJRiverでDSD64へアップサンプリングすると、 ピーク(瞬間的な最大音量)がPCM時よりも大きく膨らむという現象が起きる。
これはDSD変換の特性で、
このピーク上昇を放置すると、
そこで必要になるのが、 PCM段階であらかじめ -2.0 dB だけ余裕を作っておく処理。
DSD変換時のピーク上昇は最大 +6 dB になることがある。 -1 dB では安全マージンが不足し、クリッピングが起きる可能性が残る。
-3 dB にするとピークは確実に守れるが、 PCM段階で音量を下げすぎてしまい、 音のエネルギー感が少し失われる。
この条件をすべて満たすのが -2.0 dB。
外部リミッターではなく、JRiver内部で -2.0 dB を行うメリットは大きい。
PCM → DSD の変換直前に、 64bit精度でピーク管理が行われるため、 外部リミッターよりも自然で高精度。
外部リミッターのように“潰す”のではなく、 ピークを軽く抑えるだけの動作なので、 音の立ち上がりが自然に残る。
R2Rはアタックや中域の質感が命。 強いリミッターは相性が悪いが、 JRiverの -2.0 dB は R2Rの良さを損なわない最小限の処理。
私の設定:
この動作は “音を変えずにRMSだけ整える” という非常に自然なコンプレッション。
その結果:
つまり、 Kotelnikov GE と JRiver の -2.0 dB はセットで最大効果を発揮する。
結果として、 透明感・艶・奥行き・粒立ちを保ったまま、DSDの美しさを最大限引き出せる。
HIFIMAN EF400は、
という特徴を持つ。
Kotelnikovの Low Freq Relax(150Hz / 3dB) は、 この“太い低域”を 締めるけれど痩せさせない 絶妙な調整になる。
結果として、 ロックのキックはタイトに、ジャズのウッドベースは太く、クラシックの低弦は深く沈む という理想的な低域になる。
JRiver Music Centerのソフトの特性から、エフェクトの順番はVST3をインストールした順になるので下記のような構図となる。
SlickEQ GE → Kotelnikov GE → JRiver(DSD64アップサンプリング) → EF400(R2R DAC)この順番が最も自然で、 “音を変えずに、質感だけを上質にする” という方向性に完全一致する。
今回の設定は、
これらを同時に成立させる、非常にバランスの良い構成だ。
特に、 SlickEQ GE → Kotelnikov GE → JRiver(DSD64) という流れは、現代のデジタル環境で“最も自然で美しい音”を作るための理想的な組み合わせ。
音楽が好きな人ほど、この違いはすぐに分かる。