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- 2024年7月20日
- 2026年8月23日
キース・リチャーズ『Talk Is Cheap』レビュー|ソロ初作で炸裂する究極のリフ
キース・リチャーズはローリング・ストーンズの主要メンバーで特……

オールマン・ブラザーズ・バンドを聴くようになったのは、Derek and the Dominos『Layla and Other Assorted Love Songs』に収録されている『いとしのレイラ』を聴いたからだ。この曲のスライドギターはデュアン・オールマンが弾いており、前半のすすり泣くような切迫した雰囲気から後半の安らぎへとまるで現世から来世へ続いている演奏だ。このようなギターは初めて聴いたので、詳しく調べて他のアルバムも聴くようになったのだ。
正直、デュアン・オールマンにとっても『いとしのレイラ』は最高の名演だろう。自身のオールマン・ブラザーズ・バンドでもあのような演奏はない。泥臭い演奏がほとんどだ。そんな中で『フィルモア・イースト・ライヴ』は神格化され名盤となっている。しかし残念なことに音質が悪い。そこで音質がいいと言われているmobile fidelityのリマスター盤2枚を購入して聴き比べた。音質は通常盤より改善され立体感は出ているが、完全にノイズは除去できないくらいにマスターテープ自体良くないのだ。
ここで折角なので、当時のバンドの状況や録音条件等をご紹介したい。
オールマン・ブラザーズ・バンドは1969年、デュアン・オールマン(Gt)、グレッグ・オールマン(Org/Vo)、ディッキー・ベッツ(Gt)、ベリー・オークリー(Bs)、ブッチ・トラックス(Dr)、ジャイモー・ジョハンソン(Dr/Perc)というツインギター・ツインドラムの変則編成で結成された。スタジオ盤の『The Allman Brothers Band』(1969年)、『Idlewild South』(1970年)はいずれも商業的には地味な成績に終わったが、南部を中心に地道なツアーを重ねる中で「ライブでこそ本領を発揮するバンド」という評判を確立していく。
その評判を決定づけたのが、1971年3月12日・13日にニューヨークのフィルモア・イーストで行われた計4公演を収録した本作である。プロデューサーはアトランティック・レコードの名エンジニア、トム・ダウド。同年7月にダブルアルバムとしてリリースされ、バンド初のゴールドディスクとなる商業的ブレイクスルーを果たした。
皮肉にも、この成功の直後にバンドは大きな悲劇に見舞われる。リリースからわずか3ヶ月後の1971年10月29日、デュアン・オールマンがオートバイ事故で急逝。さらに翌1972年11月にはベリー・オークリーも同様にオートバイ事故で命を落とした。結果として本作は、デュアンがバンドの正式メンバーとして演奏した最後期の記録であり、バンドの絶頂期を封じ込めた「伝説」として今なお特別な位置を占めている。
デュアン・オールマンは主に1957年製レスポール・ゴールドトップ、後年は1959年製レスポール・チェリーサンバーストを使用したことで知られる。彼がレスポールを選んだ理由はいくつか重なっている。
まず、ハムバッカー・ピックアップの高出力と豊かなサステインが、スライドギター奏法との相性に優れていた点が大きい。デュアンはオープンE系のチューニングでコリシジン(風邪薬)の空き瓶をスライドバーとして使う独自のスタイルを確立しており、音が長く伸び、太い中域を保ったまま歌うようなフレージングを可能にするレスポールの特性は、このスタイルと不可分だった。
さらに、マーシャル・アンプと組み合わせた際に生まれるクリーミーな歪みとサステインの持続も、彼の泣くようなスライドトーンを支える重要な要素だった。シングルコイルのストラトキャスターに比べ、レスポランのハムバッカーはノイズが少なく音圧感があるため、大音量のライブ環境でも太く安定した音像を保ちやすい。こうした要因が組み合わさり、デュアンのトレードマークである「歌うスライドギター」の音色を形作った。
ライブアルバムがスタジオ録音に比べて音質面で不利になりやすいのには、構造的な理由がいくつかある。
。
| 項目 | PA用マイク(ダイナミック型が主流) | 録音用マイク(コンデンサー型が主流) |
|---|---|---|
| 設計目的 | 大音量下でのハウリング耐性、耐久性、扱いやすさ | 音源の忠実な再現、繊細なニュアンスの収音 |
| 周波数特性 | 中域を強調し高低域が早めにロールオフする傾向。近接効果を前提とした特性のものが多い | フラットで広帯域(数Hz〜20kHz超)な特性を狙った設計が多い |
| 過渡応答(トランジェント) | 振動板・可動コイルの質量がやや大きく、立ち上がりの俊敏さに限界がある | 振動板が軽量で立ち上がりが速く、アタックやニュアンスの再現性が高い |
| 自己ノイズ・感度 | 感度は控えめだが自己ノイズには強く、爆音下でも歪みにくい | 感度が高く微小音まで拾えるが、大音量入力には歪みやすいものもある |
| 指向性の精度 | 単一指向性ではあるが、周波数帯域によって指向特性が乱れやすい | 指向特性が周波数帯域全体で比較的均一に保たれる設計が多い |
ライブ収録では、この「拡声用に最適化されたマイク」を通した音がそのまま録音のソースになりがちで、スタジオ録音のような広帯域・高解像度な収音とは出発点から前提が異なる。1971年当時はこの傾向が特に顕著で、現在のライブ収録では収音用に別途高性能なコンデンサーマイクを立てるケースも増えているが、PA卓を通った信号をそのまま録音に用いる構造自体は現在も一部残っている。
本作『At Fillmore East』はこうした不利な条件下にありながら、トム・ダウドの録音・ミックスによって驚くほど明瞭で音楽的なバランスを実現しており、これ自体がライブ録音の名盤としての評価を押し上げる要因になっている。
『At Fillmore East』はローリング・ストーン誌の「歴代最高のアルバム500」で第49位にランクインするなど、ロック史上屈指のライブアルバムとして揺るぎない評価を得ている。23分に及ぶ大作「Whipping Post」、ディッキー・ベッツ作の名インスト「In Memory of Elizabeth Reed」、デュアンのスライドが冴え渡る「Statesboro Blues」など、デュアンとディッキーのツインギターによる即興演奏の応酬は、後のサザン・ロックやジャムバンド・シーンの原型を作ったとされる。単なる「よく録れたライブ盤」ではなく、バンドというアンサンブルが即興の中でどこまで音楽的な会話を成立させられるかを示した記録として、ジャンルを超えて参照され続けている一枚である。

| 項目 | MFSL ゴールドCD(UDCD 2-558) | MFSL ハイブリッドSACD(UDSACD 2143) |
|---|---|---|
| 発売年 | 1992年 | 2015年 |
| シリーズ | Ultradisc II(24Kゴールドディスク、2枚組) | Original Master Recording ハイブリッドSACD(ナンバリング付限定盤) |
| マスタリング経路 | アナログ・マスターテープからMFSL独自のGAINシステムでアナログ領域マスタリング後、CDにトランスファー | 1/4インチ・15ips・Dolby Aのアナログマスターを直接DSD64に変換し、アナログコンソールを経てカッティング |
| ディスク構成 | 通常CD層のみ(Redbook)、24Kゴールド反射層 | ハイブリッド構造(通常プレーヤー用CD層+2chSACD層) |
| 音の傾向 | 中域が厚く、やや丸みを帯びたアナログ的な温かみ。高域は滑らかだが伸びは控えめ | ダイナミックレンジが広く、シンバルやハイハットの微細な余韻、客席の空気感まで見通しが良い |
| 現在の入手性 | 廃盤・中古市場のみ、コレクターズアイテムとして高値で取引される傾向 | ナンバリング限定生産で中古市場でのみプレミア価格で取引 |
両者はマスタリングの手法も年代も異なるため、単純な優劣ではなく「性格の違い」として捉えるのが妥当だろう。ゴールドCDはMFSL初期のアナログ領域マスタリング特有の、少し丸められた温かみのある音作りが特徴で、長時間聴いても疲れにくい印象がある。一方のSACDはマスターテープからほぼ直接DSD変換された経路の恩恵で、ホールの残響や客席のざわめきといった「その場の空気」までが立体的に描かれ、フィルモア・イーストの熱気により肉薄する解像感がある。
ゴールドCDは2枚組、ハイブリッドSACDは1枚というプレスにおける余裕度はゴールドCDだが、音の厚みと押し出しはハイブリッドSACDに軍配が上がる。ゴールドCDは音の線が細いが奥行きのある音になっている。
その時の気分で聴くCDは使い分けているが、私の場合ゴールドCDがメインになっている。『In Memory of Elizabeth Reed』と『Whipping Post』はどちらも素晴らしい演奏で、この曲を少しでもいい音質で聴くためにmobile fidelityに拘ったのだ。
