ダイアナ・クラール『ウォールフラワー~コンプリート・セッションズ』徹底解説|Deluxe Edition盤との違いと2人のプロデューサー

来日公演を前に、『ウォールフラワー』完全版を聴く

ダイアナ・クラールが、2026年12月に名古屋・大阪・東京で来日公演を行います。来日を前に当ブログへのアクセスも増えていることから、私が最近購入した『ウォールフラワー~コンプリート・セッションズ』(SHM-CD)を取り上げ、Deluxe Edition盤との違いを整理します。

来日公演(2026年)

日付会場都市
DEC 3, 2026Civic AssemblyNagoya, Japan
DEC 4, 2026Grand CubeOsaka, Japan
DEC 7, 2026Kanadevia Hall, Tokyo Dome CityTokyo, Japan
DEC 9, 2026Kanadevia Hall, Tokyo Dome CityTokyo, Japan

Deluxe Edition盤との違いは「追加の4曲」

『ウォールフラワー』は2015年1月に日本で発売されました。コンプリート・セッションズは同年11月発売の完全版で、Deluxe Edition盤(全16曲)に新曲4曲を足した全20曲です。

Deluxe Edition盤の構成は次のとおりです。

  • 1〜12曲目:オリジナル本編
  • 13・14曲目:「イン・マイ・ライフ」「イェー・イェー」(ボーナス・トラック)
  • 15・16曲目:2014年パリでのライヴ「悲しみのバラード」「ウォールフラワー」(ボーナス・トラック)

コンプリート・セッションズは、ここに17〜20曲目として次の4曲が加わります。

  • 17.ア・ケイス・オブ・ユー
  • 18.心に秘めた想い(Sarah McLachlanとのデュエット)
  • 19.うわさの男(Vince Gillとのデュエット)
  • 20.孤独の旅路(ハート・オブ・ゴールド)

本編には Michael Bublé、Bryan Adams、Georgie Fame とのデュエットがあります。豪華ゲスト路線は、追加曲にも引き継がれています。

音質について

ユニバーサル ミュージックからリリースされているDeluxe Edition盤もコンプリート・セッションズもSHM-CD仕様で、盤の素材面に差はありません。公式情報の範囲では、マスタリングが別であることを示す記載も見つかりませんでした。したがって、本編の音は基本的に同系統と考えてよいと思います。

そのうえで、このアルバムの音質を聴いた印象をまとめます。ダイアナ・クラールのアルバムで、音質に問題のあるものはありません。本作も他のアルバムと同様、hifiサウンドです。ノイズは感じられず、音圧は高めですが、歪みは生じていません。レコーディング・エンジニアが優秀なのだろうと思います。

一方で、クラシカルな音質を好む人には、好まれないかもしれません。

2人のプロデューサーが作る「2つの世界」

クラールはカバー曲のアルバムで評価され商業的成功も収めています。この部分が、本人の意思とは無関係に利用されているのではないかと懸念しました。しかし、実際には本人も望んで製作したのではないかという考え方に変化しました。

web等で調べてみても本人の意向という内容がありました。何よりも2枚ともロングランとなる成功であることがそれを証明しています。嫌々製作したものであれば、ここまでの成功はあり得ないでしょう。

トミー・リピューマ(『ザ・ルック・オブ・ラヴ』/2001年)

トミー・リピューマは、1995年からクラールと組んできたプロデューサーです。『ザ・ルック・オブ・ラヴ』は、彼がプロデュースした彼女の4作目にあたります。長年のパートナーである名エンジニア Al Schmitt が録音を担当しました。

リピューマはジョージ・ベンソン、ナタリー・コール、バーブラ・ストライサンドらも手がけ、グラミー賞を5回受賞しています。1999年の『When I Look in Your Eyes』は、グラミーの年間最優秀アルバム部門にノミネートされました。2017年3月、80歳で亡くなっています。

クラール自身が、構想を持ってリピューマと座り、25曲ほどの候補を挙げて選曲したと語っています。

デイヴィッド・フォスター(『ウォールフラワー』/2015年)

デイヴィッド・フォスターは、グラミー賞を通算16回受賞しているカナダ出身のプロデューサー兼ピアニストです。セリーヌ・ディオン、マイケル・ブーブレ、ジョシュ・グローバンらのヒット作で知られています。『ウォールフラワー』の当時は、クラールが所属する Verve Music Group の会長も務めていました。

この作品では、フォスターがアレンジを担当し、ピアノの大半も弾いています。クラールは歌に専念する形でした。

『ウォールフラワー』というポップ路線を選んだのは誰か

発案者を1人に特定した資料は見つかりませんでした。クラール本人は、ポップ・アルバムを作りたい、ジャズ要素は加えないと、フォスターに最初からはっきり伝えたと語っています。また、タイトル曲のボブ・ディランの「ウォールフラワー」は、クラール自身がディランのブートレッグ・シリーズで見つけた曲で、このアルバムの出発点になったと報じられています。

つまり、方針はクラール本人の意向が強く、それをフォスターが形にした作品だと読むのが妥当です。

私の評価

選曲されているのは、1960〜70年代の名曲で、1曲あたり3分前後の聴きやすい曲です。

私がこれまで紹介してきた「眠れない人に聴いて欲しいシリーズ」に加えてもいいアルバムだと思います。また、雰囲気のある曲調にアレンジされているので、聴き方によってはクリスマスソングとしても楽しめます。来日公演が12月であることを考えると、この季節に聴くのにも向いています。

『ザ・ルック・オブ・ラヴ』と同じコンセプトで、正直退屈した

ここからは個人的な感想です。ストリングスをたっぷり使った、ミディアムからスローのバラード中心の企画盤という点で、『ウォールフラワー』は『ザ・ルック・オブ・ラヴ』と同じコンセプトに聴こえます。当初、私は聴いていて退屈に感じました。

それでも曲がいいので、つい聴き惚れてしまい、結局コンプリート・セッションズを購入しました。

一方で、ポップスのカバーでセールスも評価も高くなることには、残念な気持ちがあります。批評では、フォスターの磨き上げた音作りによって、クラールらしさが薄れたと評されました。

Deluxe Edition盤で十分か、追加4曲に価値を見出すかは、聴き手次第です。デュエット好きの方には、追加曲を含めた完全版をおすすめします。


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