眠れない人のための音楽の聴き方|薄明りと照明タイマーで作る、入眠前の1時間

眠れない夜に、音楽を聴く人は多いと思います。ただ、部屋を真っ暗にして聴くのが正解かというと、そうとは限りません。

私自身、2020年に入院したあと、眠れなくなった時期があります。そのとき意外だったのは、真っ暗な部屋より、ろうそくの灯りくらいのほのかな明るさのほうが眠りやすかったことです。暗闇が、思っていた以上に怖かったのです。

この体験は、思い込みなのか。医学論文に根拠はあるのか。調べて、音楽・光・暗闇への恐怖の3つに分けて整理しました。そのうえで、入眠前の1時間をどう作るかをまとめます。

先に結論

  • 音楽を聴くと、睡眠の質は改善する可能性が高い。ただし、入眠までの時間などの客観的な指標では、改善が確認できない可能性もある
  • 就寝前の「薄暗い光」は、普通の室内光よりメラトニン(眠りを促すホルモン)が抑えられにくい
  • 不眠の人に就寝前の暖色の薄明りを当てた予備的な試験で、睡眠の質と睡眠効率が改善した
  • 「真っ暗より薄明りのほうが眠りやすい」ことを、不眠の人で直接比べた研究は、今回の調査では見つからなかった

研究1|音楽は不眠に効くのか

2022年に発表されたコクランレビュー(Jespersen ら)は、成人の睡眠の問題に対する音楽の効果を調べた13件の研究、合計1007人を統合した解析です。

  • 睡眠の質は、音楽を聴いたグループのほうが大きく改善しました。睡眠の質を測る指標(PSQI)の差は、約1標準偏差に相当する大きさです(10件の研究、708人、エビデンスの確実性は中程度)
  • 入眠までの時間、睡眠時間、睡眠効率は、わずかに改善する可能性があるとされています。ただし、確実性は低いと評価されています
  • 睡眠ポリグラフなどの客観的な指標を使った3件の研究(136人)では、改善が確認できない可能性が示されています
  • 使われた音楽は、いずれも鎮静的・リラックス系でした。クラシック、ニューエイジ、ジャズなど様々なジャンルが含まれ、どのジャンルが特に効くかは、今のところ分かっていません
  • 研究者が選んだ音楽と、本人が選んだ音楽で、睡眠の質への効果に差はありませんでした
  • 音楽による悪影響を報告した研究はありませんでした

音楽は「眠った感覚」を改善しやすいが、睡眠の中身まで変えるかは分からない、という読み方が正確です。また、音楽を聴くかどうかは本人に分かるため、研究の設計上、思い込みの影響を完全には取り除けません。

研究2|就寝前の光の明るさ

Gooleyら(2011)は、就寝前の光の明るさがメラトニンに与える影響を調べました。対象は18〜30歳の健康な116人で、2つの実験のデータを後から解析しています。

  • 就寝前の8時間を、室内光(200ルクス未満)で過ごした場合と、薄暗い光(3ルクス未満)で過ごした場合を比較
  • 室内光のほうが、メラトニンの分泌開始が遅れた人が99.0%
  • メラトニンが分泌される時間は、約90分短くなった
  • 普段なら眠っている時間帯に室内光を浴びると、メラトニンは半分以上抑えられた

Science News の解説では、3ルクスは「3本のろうそくを1メートル離して灯したくらい」の明るさとされています。ろうそくの灯りくらいなら、就寝前の光として「暗い側」に入る、ということです。

ただし、これは健康な若い人のメラトニンを測った研究です。不眠の人の眠りやすさを直接調べたものではありません。また、あくまで「就寝前」の光の話で、眠っている間も灯りをつけておくことを勧める根拠にはなりません。

研究3|不眠の人に暖色の薄明かりを当てる試験

韓国の研究チーム(Yoon ら、2024)は、不眠の人に就寝前の暖色の光を当てる試験を行いました。

  • 対象は、睡眠の問題がある20〜60歳の40人
  • 2週間のランダム化比較試験(どちらのグループか本人には分かる設計)
  • 光を当てたグループには、青色成分を抑えた暖色の光を就寝前に浴びてもらった
  • 結果: 睡眠の質と睡眠効率が、光を当てなかったグループより改善した(睡眠効率は84.98%と82.11%)。メラトニンの分泌開始も、約30分早まった

著者ら自身が、サンプルが小さく、期間も短いことを限界として挙げています。「有望だが、確定ではない」という段階の研究です。それでも、不眠の人に就寝前の暖色の薄明りが役立つ可能性を、実際の臨床試験で示した点に意味があります。

暗闇への恐怖と不眠

私の体験の「暗闇が怖かった」という部分は、珍しいことではないようです。

不眠症の大学生を対象にした小規模な研究で、ほぼ半数に暗闇への恐怖があったと報告されています。別の小規模な研究でも、自分を睡眠の悪い人と答えた人は約半数が暗闇を怖がり、睡眠のよい人は約4分の1だったと伝えられています。

ただし、私はこれらの原著論文を確認できておらず、二次的な情報に基づく話です。数字は参考程度に受け取ってください。ここから言えるのは、「暗闇が不安で眠れない人が一定数いる可能性がある」というところまでです。

研究が言っていないこと

ここまでの内容を整理すると、研究が裏づけているのは次のとおりです。

  • 音楽は、主観的な睡眠の質を改善する
  • 就寝前の薄暗い光は、メラトニンが抑えられにくい
  • 就寝前の暖色の薄明りは、不眠の人の睡眠を改善する可能性がある

一方で、次のことは、裏づけがありません。

  • 真っ暗より薄明りのほうが、不眠の人は眠りやすいこと
  • 音楽と薄明りを組み合わせると、効果が上がること
  • ヘッドホンで音楽を聴きながら眠ることの効果と安全性

私の「ろうそくの灯りのほうが眠りやすかった」という体験は、あくまで1人の経験です。研究と体験を分けて読んでください。

入眠前の1時間の作り方

研究の知見と、実際に使える器具を組み合わせた、就寝前1時間の過ごし方です。

就寝の約60分前: 天井の照明を落とす

天井のシーリングライトを最も暗い調光にするか、消して間接照明に切り替えます。シーリングライトには、調光に加えて、おやすみタイマーを備えた機種があります。たとえばアイリスオーヤマの商品説明では、おやすみタイマーは30分で、設定すると徐々に暗くなり、時間が来たら消灯します。10分と30分から選べる機種もあります。確認できた範囲では、1時間のタイマーは見つかりませんでした。

就寝の約30分前: 暖色のほのかな灯りだけにする

ここで、ろうそくの灯りに近い光に切り替えます。選択肢は次のとおりです。

  • スマート電球: スマホや音声で操作できる電球です。キャンドルのような暖色に調整できます。フィリップスのHueは、最大輝度から0.2%まで調光できるとされています。スケジュール機能や、就寝時のフェードアウトに対応した製品があります。ただし、フェードの長さを60分に設定できるかは、機種ごとに確認が必要です
  • LEDキャンドル: ゆらぎのある炎に近い光で、火を使いません。IKEAのLEDキャンドルは、点灯から6時間で自動消灯し、18時間後にまた点灯するタイマーを内蔵した製品が紹介されています。3時間か6時間を選べる製品もあります。徐々に暗くなるわけではない点に注意してください

ヘッドホンをつけて、音楽を流す

ヘッドホンの重さと、ケーブルの長さを確認します。寝返りを打つと、ケーブルが首に絡まったり、耳が圧迫されたりします。音量は、会話が楽に聞こえる程度より、さらに小さくします。再生アプリやプレーヤーのスリープタイマーで、一定時間後に止まるようにしておくと安心です。

最後は、消灯ではなく最小の明るさで止める

暗闇が不安な人は、完全に消灯するより、最小の明るさや常夜灯で止めるほうが落ち着く場合があります。アイリスオーヤマのシーリングライトには、調光10段階に加えて、常夜灯を2段階で切り替えられる機種があります。これは、私の体験に基づく提案です。研究で確かめられた方法ではありません。

仕様は、2026年10月時点の販売ページの記載に基づいています。購入前に、各メーカーの最新の仕様を確認してください。

眠れない夜に向く盤の選び方

Cochraneのレビューでは、ジャンルによる効果の差は分かっていません。そこで、ジャンルではなく、聴き心地の条件で選びます。

  • 急に音量が変わらない
  • ノイズや歪みが少なく、耳に刺さらない
  • 悲しくなる曲や、気持ちが高ぶる曲が少ない
  • 1枚を通して、同じ穏やかさが続く
  • 歌詞の意味を追わなくても聴ける

このサイトの「眠れない人に聴いて欲しい」シリーズでは、こうした視点で盤を紹介しています。

注意点

  • 炎は使わない: 暗い部屋でヘッドホンをしていると、火の管理が甘くなりがちです。LEDキャンドルか、自動で消えるタイプにしてください
  • 香り: アロマを使う場合も、強い香りは疲れや頭痛の原因になります。控えめに
  • 病院に相談する目安: 不眠が長く続く場合は、工夫で解決しようとせず、医師に相談してください。この記事は治療の代わりではありません
  • 効果には個人差がある: 研究の数字は平均です。合わなければ、無理に続ける必要はありません

まとめ

  • 音楽は、睡眠の質の感覚を改善する可能性が高い
  • 就寝前の薄暗い暖色の光は、メラトニンを抑えにくく、不眠の人にも役立つ可能性がある
  • 「真っ暗より薄明りが眠りやすい」ことは、研究では確かめられていないが、暗闇が怖い人には、試す価値がある
  • 就寝の1時間前から灯りを落とし、30分前に暖色の薄明りにして、最小の明るさで止める流れを、まず1週間試してみてください

参考文献

論文

  1. Jespersen, K. V., Pando-Naude, V., Koenig, J., Jennum, P., & Vuust, P. (2022). Listening to music for insomnia in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2022(8), CD010459. https://doi.org/10.1002/14651858.CD010459.pub3 / 一般向け要約: https://www.cochrane.org/CD010459/music-listening-to-improve-sleep-quality
  2. Gooley, J. J., Chamberlain, K., Smith, K. A., Khalsa, S. B. S., Rajaratnam, S. M. W., Van Reen, E., Zeitzer, J. M., Czeisler, C. A., & Lockley, S. W. (2011). Exposure to room light before bedtime suppresses melatonin onset and shortens melatonin duration in humans. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 96(3), E463–E472. https://doi.org/10.1210/jc.2010-2098
  3. Yoon, J., Heo, S.-J., Lee, H., Sul, E.-G., Han, T., & Kwon, Y.-J. (2024). Assessing the Feasibility and Efficacy of Pre-Sleep Dim Light Therapy for Adults with Insomnia: A Pilot Study. Medicina, 60(4), 632. https://doi.org/10.3390/medicina60040632 / PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38674278/

解説記事・二次的な情報

  1. Science News, “Night owls may want to dim their lights”(3ルクスの明るさの説明): https://www.sciencenews.org/blog/science-the-public/night-owls-may-want-dim-their-lights
  2. Healthline, “Nyctophobia”(不眠症の大学生を対象とした小規模研究の紹介。原著は未確認): https://www.healthline.com/health/nyctophobia


▶ Amazonおすすめ照明一覧

Googleの検索結果で、当サイトの記事を見つけやすくなります。

TOPへ