眠れない人に聴いて欲しい|ビージーズ名盤2選

Odessa(オデッサ)は退屈だが、眠れない夜に向く。Trafalgar(トラファルガー)は全曲が私に合い、重く深く沈む。紙ジャケットの限定盤2枚を聴いて、なぜこの2枚に値が付くのかも調べた。

購入した2枚

購入したのは、紙ジャケット仕様の限定盤2枚だ。Odessaは2013年、Trafalgarは2014年に発売された。ディスクユニオン池袋で、店員に確認して買った。

2枚の支払総額は9,906円(割引適用後)で、1枚あたり約5,000円になる。店頭でもプレミア価格だった。理由は後半で書く。

私はこれまでビージーズをほとんど聴いてこなかった。洋楽ベストでMelody Fairを聴いたくらいだ。この曲は、映画『小さな恋のメロディ』(1971年)で使われた曲として知られる。

ビージーズの沿革

ビージーズは、バリー、ロビン、モーリスのギブ3兄弟による、英国とオーストラリアのバンドだ。1960年代半ばに英国へ戻り、1968年にI’ve Gotta Get a Message to YouとI Started a Jokeでトップ10入りした。

次の作品がコンセプト・アルバムのOdessa(1969年)で、大きな成功にはならず、バンドはこの後に一時解散する。主因はバリーとロビンのフロントマン争いで、シングルにする曲をめぐる対立もあった。バリーとモーリスはCucumber Castleを、ロビンはソロ作を出して、兄弟は別々に歩んだ。

再結成は1970年だ。契約上の問題を片づけるために話し合いを始めたことも、きっかけの一つだった。再結成後の最初のアルバムが2 Years On(1970年)で、Lonely Daysがヒットした。その翌年に出たのがTrafalgarだ。How Can You Mend a Broken Heartは、1971年8月に全米1位となり、4週間その座にあった。

その後は数年のヒット不振を経て、1975年のMain Courseでディスコの時代に入る。1977年のSaturday Night Feverのサウンドトラックで、ディスコの時代を象徴する存在になった。

Odessa(オデッサ)

1969年に2枚組LPとして出た作品だ。アコースティックを軸にしたフォークやチェンバー・ポップの曲に、ビル・シェパードの華やかなオーケストラ・アレンジが重なる。

聴いた印象は、ビートルズの延長だ。ボーカルとアコースティックギターが中心で、そこにストリングスが入る。オペラを意識したアルバムなのかと思ったが、そう語る資料は見つけられなかった。

気に入ったのは、Melody Fair、Sound Of Love、Seven Seas Symphonyの3曲だけだった。ほかは退屈で、穏やかな曲は私には合わない。それでも、眠れない夜には向いている。この記事を「眠れない人に聴いて欲しい」と題した理由は、そこにある。

ジャケットは赤茶色で、ビロードのような手触りがある。American Songwriterも、このアルバムの赤い起毛風のジャケットに触れている。手元の紙ジャケット盤は、その雰囲気を写したものに見える。

評価は割れている。American Songwriterは、断続的に光るが、とりとめがなく、やや気取った作品と評した。発売当時は批評も大衆も冷たかったが、後年に再評価された、と紹介するラジオ番組もある。

Trafalgar(トラファルガー)

全曲が私の好みに合った。重く深く沈む感触がいい。

公式サイトは、バラード中心の成熟した作品と紹介している。How Can You Mend a Broken Heartはグラミー賞にノミネートされ、当時のRolling Stone誌のレビューも好意的だったと、同じ公式サイトにある。

ジャケットは、古い油彩画を思わせる重い色調だ。音の沈み方とよく合っている。

題名の由来には2通りの説明がある。公式サイトは、1805年のトラファルガーの海戦に由来するとしている。一方、ある海外のレビューは、表題曲がロンドンのトラファルガー広場で暮らす孤独な男の歌で、海戦の絵のジャケットは的外れだと書いている。どちらが正しいかは、確認できていない。

聴いた限り、Odessaにもこの盤にも、海の情景は浮かばなかった。音楽は、海ではなく内面に向かっている。

崩壊のOdessaが明るく、再結成のTrafalgarが沈む

順番が逆に思える。崩壊の最中に作られたOdessaは、私には明るく爽やかな曲が多く聞こえる。再出発したあとのTrafalgarは、重く沈む。

公式サイトによれば、How Can You Mend a Broken Heartは、兄弟が距離を置いた期間のあとに書かれ、この曲を書くことが兄弟を再び近づけた。傷を抱えたまま集まり直した、と聴けば腑に落ちる。ただ、それが曲の暗さの理由だと示す証拠は見つけられなかった。

Odessaが明るく聞こえるのは、私が気に入った3曲が明るい側だったからかもしれない。壮大な構想のなかで、崩壊の緊張が暗さではなく華やかさに向かった、という見方もできる。どちらも推測だ。理由が分からないことも、この2枚を並べて聴く面白さだと思う。

なぜ紙ジャケット盤にプレミアが付くのか

Amazonの出品価格は、Odessaの2013年限定版が4,286円、Trafalgarの2014年限定版が7,920円だった。比べる基準にしたのは、Odessaの1992年発売の盤(中古1,144円)と、Trafalgarの1997年のインポート盤(中古2,600円)だ。限定版は、基準の約3〜4倍になる。これは出品価格であり、売れた価格ではない。

紙ジャケットというだけでは、プレミアは付かない。ほかのCDでは、紙ジャケット仕様でも高値にはならない。この2枚には、次の事情がある。

  • 限定盤であること。完全な限定盤だからプレミアが付いた、という見方もある。
  • この紙ジャケット仕様が再販売されていないこと。確認できる範囲では、再プレスはない。
  • Odessaには、ビロードのような質感のジャケットがあること。Trafalgarは普通の紙ジャケットなので、Trafalgarの方が高いのは、質感ではなく数の少なさによると考える。

私は、再販売がないのは売れなかったからだと考える。売れなければ、再プレスはされず、市場に出回る数も少ない。数が少ない盤を、いま欲しがる人がいる。供給が少なくても、欲しい人がいなければ値は上がらない。私もその一人だ。

つまり、名盤だから高いのではない。売れなかったから数が少なく、集めたい人がいるから高い。

物理メディアは2030年以降どうなるか

日本レコード協会が2026年3月に初公表した2025年の売上推計では、音楽ソフトが音楽配信を上回った(57%対43%)。CDアルバムは前年の121%と好調だった。アナログレコードも、生産金額が37年ぶりに80億円を超えたと報じられている。

ただし、これを洋楽の旧譜に当てはめるのは早い。2023年のCDは、生産金額のうち洋楽が約1割だった。2025年の推計は新しい統計の初回で、過去の生産実績とは単純に比べられない。

ビージーズの紙ジャケット盤は、Amazonに新品の出品がなく、供給はすでに止まっている。2030年以降も、中古市場の価格は、いま市場にある数と、集めたい人の数で決まると私は考える。この2枚の価格は、これからの流通量しだいで変わる。

参考


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