- Workout Groove
- 2024年6月19日
- 2026年8月23日
反町隆史『BEST OF BEST』レビュー|「Forever」「POISON」と90年代J-POP
1997年のドラマ『ビーチボーイズ』の主題歌『Forever……


1983年、友人から借りたレコード
このアルバムを最初に聴いたのは1983年。友人から借りたレコードだった。
正直に書くと、当時の印象は音楽の良し悪し以前に「音」だった。全体に籠っていて、エッジがなく、音の伸びも感じられない。オープニングの曲がヒットしたことは記憶しているが、アルバムとして強く心に残ったわけではなかった。
主要な収録楽曲
| 曲名 | 特徴・解説 |
| In a Big Country | バンドの代表曲であり全米ヒット(17位)。バグパイプ風ギターリフとダイナミックなドラムが炸裂する、疾走感あふれる壮大なアンセム。 |
| Fields of Fire (400 Miles) | 全英TOP10ヒット。マーチングドラムと叙情的なギターメロディが印象的な、バンドの勢いを象徴するナンバー。 |
| Chance | 切なくエモーショナルなバラード。スチュアート・アダムソンの哀愁を帯びたヴォーカルと歌詞の深みが際立つ名曲。 |
| Harvest Home | メジャーデビューシングル。ケルト音楽の要素とパンクロックのエネルギーが融合した、グループの原点を示す楽曲。 |
| Porrohman | アルバムのラストを飾る7分超の大作。民族的な重厚さとドラマチックな展開を見せるディープなトラック。 |
今回、CDで聴き直してみた。レコードに比べると少しエッジが効いた、という程度の変化だ。聴けないほどではないが、いい音だとは言えない。オーディオ的な快楽を求めて聴くアルバムではないだろう。そして音が籠ったように聴こえるのは、実は故意にオーバーダビングした結果ということが最近分かった。
レコーディングでの重ね録り(ダビング)
スタジオ(『The Crossing』制作時)では、プロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトの手腕により、アダムソンとワトソンのツインギターが何重にもオーバーダビングされた。
左チャンネル: アダムソンのメインE-Bow・メロディライン
右チャンネル: ワトソンのカウンター・メロディ(ハーモニー)
中央: ピッチシフターを通したクランチ気味のリズムギター
これにより、シンセサイザーのレイヤーのような分厚さと、生楽器特有の弦の摩擦感・ピッキングのニュアンスが同居した「ギターによるケルト・オーケストレーション」が完成したとなっているが、私はそうは思わない。
一方で、音楽そのものはリラックスして聴ける。力まずに流しておける心地よさがあり、イージーリスニングに適したアルバムだと感じた。音質に期待しすぎなければ、BGMとしても楽しめる。
有名なバンドではないが、聴いて損はない。
1980年代は、1970年代の重苦しさを引きずりながらも、元気のいいバンドが多数登場した時代だった。世界的に景気が拡大路線にあったことも影響しているのだろう。このアルバムにも、その時代の明るさと勢いが残っている。
バックの高域で鳴っている音は、エフェクトをかけたギターによるものと言われている。バグパイプを思わせる独特の響きだ。煩く感じることはなく、古いタイプのロックとよく調和している。こうしたロックは、今ではなかなか聴けない。
バグパイプを思わせる独特の響きは、E-Bowからもたらされている。
E-Bowは、手持ち型の小型アタッチメントで、内蔵された電磁回路によってギターの弦を連続的に振動させ、バイオリンやチェロのような無限のアタックレス・サステイン(持続音)を生み出す。
通常、E-Bowは伸びやかなソロやアンビエントなドローン音に使われるが、ビッグ・カントリーはこれを以下のように応用した。
E-Bowで生み出されたサステイン音を「バグパイプの音色」へ変貌させたのが、エフェクト処理。
サウンドの核となったのが、1/5度(5th)やオクターブ上の音を同時に生成するピッチシフター。
ケルトの伝統楽器に見られる微妙なピッチのズレや空気の揺らぎを再現するためにフランジャーとコーラスを使用した。
残響と奥行きを与えるため、ミリ秒単位で調整されたデジタルディレイを常時使用。
若い世代で、このバンドを知っている人はほとんどいないと思う。だからこそ、ぜひ聴いてみてほしい。音質には目をつぶっても、新しい発見があるはずだ。
評価メモ